「作業マニュアルの『異音がする』という記述だけでは、何も伝わらない」。
岡山工場製造課の藤原健は、この誰もが感じていた課題に、得意のPCスキルを活かした動画マニュアル作成という斬新なアイデアで応えた。
彼の「変えて良くなるものは変えていきたい」という信念は、会議運営の効率化、そして前例のないマイクロ水力発電構想へと拡がり、周囲からは「競走馬」として期待され、ついに社内表彰で“3冠”を達成。
社長が「面白いヤツ」と評し、同僚が「藤原さんのような人を評価する会社であって欲しい」と語るその原動力と、ネオケミカルで「爪痕を残す」と意気込む彼の挑戦の軌跡を、社長との対談から紐解く。
藤原健が社内にある設備の動画マニュアルを作り始めたきっかけは、この考えからだった。
高校ではコンピュータ部に所属していた。パソコンはハイスペックで、編集ソフトもAdobeのPremia Proと本格的だ。最初に手掛けたのは「酸素濃度計の使い方」という動画マニュアル。10分弱の作品で撮影から編集まですべて一人で作り上げた。これまで4本の動画を作っていて、ヒット作は会社の説明会で使う工場を紹介する動画。
目を付けたのはマニュアルだけではない。今では社内の会議も自らファシリテーターとなって進行し、アジェンダを作るなど社内での会議の運営や効率化についても挑戦している。
蒸留にかかわる本筋の業務とは一線を画しているように見えるが「結果はわからないが、業務の中で変えて良くなると思うことは変えていきたい」という強い信念があった。
この信念を貫けているのは、周囲の理解があってのこと。藤原もそれは実感していて、競馬に例えてこんな風に話した。
ネオケミカルでは年の瀬の忘年会の席で、その1年で特に頑張った社員を表彰している。藤原は2023年に社員全体、工場長、社長から選ばれ、『3冠』を獲得した。
中平社長:彼が持つマインドは会社にとっては非常に重要。何もしなければ何も変わらない。うまくいかないという結果が出ることも大事なんです。他の社員から言われるんですよ。「藤原さんみたいな人を評価する会社であって欲しい」と。
藤原が次にトライしようとしているのは、高さのある蒸留塔の上層部から水が流れ落ちる水力を利用した「マイクロ水力発電」だ。未知への挑戦に燃える気持ちを胸に秘め、藤原はこう言って笑った。
藤原:爪痕を残さないと。みんな僕に賭けてくれなくなるんで(笑)
社内“3冠”の栄誉を手にし、周囲から「競走馬」と期待される藤原。彼の「変えて良くなるものは変えていきたい」という挑戦は、動画マニュアル作成から会議の効率化、そしてマイクロ水力発電構想へと、枠にとらわれず広がり続けている。
その挑戦が次々と広がりを見せる背景には、何よりもまず「挑戦する機会を与えられたこと」を藤原自身が大きなきっかけと捉えていること、そして、そうした社員一人ひとりの自発的な一歩こそが人と会社の成長に不可欠だと確信している中平社長の強い思いがある。あなたの「やってみたい」という情熱やユニークな視点が、藤原のように周囲を巻き込み、ネオケミカルに新しい風を吹き込む。(岡山放送)