岡山工場製造課長山下雄平が挑んだのは、前人未到ともいえる「120℃の壁」。
高融点物質の新たな分離精製装置開発という困難なプロジェクトに対し、彼は“出来ない”という状況から試行錯誤を繰り返した。
結果として直接的な成功には至らなかったものの、その挑戦はネオケミカルの「“出来ない”からの出発」という精神を体現するものだった。
社長である中平は、山下の挑戦とそこから得られた「失敗という名のデータ」をどう評価するのか。そして、その経験が組織全体にとってどのような価値を持つのか。
二人の対談を通して、ネオケミカルが大切にする挑戦の文化と、失敗を次への糧とする会社の社風に迫る。
物質の分離精製としては液体から行う“蒸留”が一般的とされている。これに対し固体は“晶析”が一般的な分離精製方法である。融点が80℃を越える物質の分離精製は、蒸留では難易度が上がるため晶析となるが、晶析は工程が煩雑で費用が高いのが現状だ。
この晶析による「高融点装置」の開発プロジェクトに挑むのは岡山工場が出来た2006年に入社した山下雄平。
この装置は融点が120℃の固体を熱して液体化したものを、更に加熱して気化させた上で冷やし、純度の高い液体を回収するというもの。山下は装置の製作を任されることになった。社内でも初めて挑む未知の領域である120℃の壁。試作は困難を極めた。
独学で1年。試作機は完成した。しかしテスト結果は芳しくなかった。気化した物質を液体に戻すときに保温ムラが出来て、液体の一部が固まり蒸留が停止してしまうのだ。幾度も改良を重ねたが、120℃の壁は高かった。完成を見ることは無く、山下は配置転換でプロジェクトから離れることになった。
開始から7年、装置は他のラボの担当者が完成させた。問題の保温ムラは液体が通る配管を全体的に温めた油で覆ってやることで解決できた。山下は管の周囲を電熱線のヒーターで巻いていたため全体的に一定の温度で温められていなかったのだ。
前向きな山下を社長の中平も高く評価する。それは化学に携わる者として持たねばならない矜持があるからだ。
中平社長:今回、山下の方法がダメだったということが分かったことが大きい。今の成功の糧になっている。「出来ない」からは何も生まれない。「“出来ない”からが出発」と思うことが我々には重要なんです。
岡山工場製造課の課長としてチームを率いる山下は、120℃の壁に挑んだあの日の経験を原点とし、その挑戦精神を胸に今も新たな課題へ常に前向きに向き合っている。
ネオケミカルは、まさにこの「“出来ない”からの出発」を大切にし、個々の挑戦を組織の力へと昇華させる企業風土。失敗を恐れず未知の可能性に挑み続ける先にこそ、まだ見ぬ価値が創造される。あなたの「出来ない」も、ここでは輝かしい未来への「出発点」となるのだ。(岡山放送)